眠気解消を目的とした病院で処方する治療薬
ナルコレプシーと特発性過眠症の治療薬
日中の眠気が問題となる睡眠の病気、ナルコレプシーに用いる眠気を覚ます薬とは
監修:阪野クリニック岐阜いびき睡眠障害の治療外来 阪野勝久
日中の耐えがたい眠気があるので、仕事効率が低下して、作業に支障がでいます。
学生時代では、授業中に起きていられないので、成績低下が生じて治療相談のため、
病院を受診することが少なくありません。
きちんと年齢相応の睡眠時間をとっているのに、そして、規則正しく就寝と起床の
時間を守っているのに、昼間、眠気がひどい。その結果、授業の妨げになっている。
職場で作業中に気が付けば寝ていて上司に注意されるなど、問題となります。
睡眠障害の病院で行われる精密検査および診断の手順については、
個別ページであるナルコレプシーの検査と診断をご覧下さい。
病院でナルコレプシーや過眠症と診断され、眠気が日常生活に支障をきたす場合に
医師の裁量で「眠気を覚ます治療薬」が処方されます。具体的には次の段落にある
3種類の薬があります。
一般的に精神刺激薬、中枢神経刺激薬と呼ばれています。厚生労働省が治療用に
認可した薬剤として、モダフィニル(モディオダール)、ペモリン(ベタナミン)、
そして、メチルフェニデート塩酸塩(リタリン)があります。
ナルコレプシーによる強い眠気に対する第一選択で用いることが多い薬剤です。
1錠100mgとなっており、通常、1日1回200mgを朝食後に服用して眠気を覚まします。
効果不十分の場合は、昼食後に100mgを追加することがあります。
それでも、眠気が取れないときには、他の薬剤と併用して眠気の対策を
行うことがあります。よくある副作用として、頭痛、吐き気があります。
薬を飲むタイミングが遅くなると、入眠困難が生じるので注意を要します。
すでに閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断を受けており、CPAP治療を行っても
眠いという方がいます。CPAP治療後の眠気対策にも、この薬が用いられます。
処方には客観的な眠気を証明するデータ(MSLTによる評価)が必要です。
モダフィニルが病院で使用可能になる前から使用されていた精神刺激薬です。
ナルコレプシーの確定診断がなされたときに、眠気の程度に応じて、
10~60mgの範囲で調整します。
特徴として、強い覚醒作用がある反面、依存性が高いことが注意点です。
交感神経刺激による影響として、神経過敏、焦燥感、動悸、発汗、口渇、
不整脈の出現が報告されています。また、耐性も問題となります。
このため、リタリン流通管理委員会があり、登録医師、登録調剤薬局、
および登録調剤責任者によって、適正使用が遵守されています。
ナルコレプシーのほか、近縁傾眠疾患に対する治療薬として認可されており、
朝食後にベタナミン錠剤として、1日あたり20~200mgを朝食と昼食後に分けて
服用し、日中、覚醒が保てるようにします。
肝障害が副作用として出現することがあり、定期的な血液検査が必要です。
通常、肝機能障害の問題があるので、少量から開始して、なるべく少ない
用量で症状をコントロールするよう努めます。
眠気で長年困っていた方々が、精神科や睡眠の専門医によって、睡眠障害の
診断を受けて、これらの治療薬を飲み始めるときに気を付ける事項があります。
それは、眠気を完全になくすのに必要な用量を摂取しないことです。
先に記載したように、精神刺激剤には耐性の懸念がいつもあるので、7割程度の
症状改善で妥協したほうが無難です。そうでないと眠気のコントロールに
より多くの用量が必要となります。可能なら休薬も検討しましょう。
このページで紹介した3種類の薬については、妊婦、授乳婦に対して、安全性が
確立されたものではありません。挙児希望の場合、計画妊娠が必要です。
詳細は、睡眠専門医に相談しましょう。
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