特発過眠症の症状の特徴と診断過程
専門医による特発性過眠症の診断と治療
長く寝ても非常に眠い病気の診断基準と反復睡眠潜時検査(MSLT)および治療管理
監修:阪野クリニック岐阜いびき睡眠障害の治療外来 阪野勝久
中枢神経系の問題によって昼間に眠い症状が出る睡眠障害の代表格は、
ナルコレプシーです。本頁で紹介する病気は、中枢性過眠症と呼ばれる
グループに属する特発性過眠症(idiopathic hypersomnia)です。
特発性過眠症では、睡眠発作がナルコレプシーと比較すると長いこと、
深いノンレム睡眠が出現することが特徴となっています。
さらに、 夜間の睡眠時間が長くなる傾向があります(10時間以上となる)。
学校生活を送っている生徒では、この病気があると、寝起きが悪いので、
起こそうと試みてもなかなか起きません。また、何とか目覚めた後も
酩酊状態のような「頭がぼーっとする症状」が出現します。
居眠り、昼寝は1時間以上続くことが多く、ナルコレプシーと比べると、
眠ってもスッキリしていない傾向があります。自律神経症状の合併を
認めることもあります。
まずは、毎日、眠気が強いという主症状があることが条件となります。
ナルコレプシーと同様に、「少なくとも3ヶ月以上続く眠気」が、
診断規準に必要な臨床症状です。思春期に発病することが多いです。
次に、カタプレキシー(情動脱力発作)が存在しないことが、
条件になります。ナルコレプシー1型との鑑別点です。
さらに、反復睡眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT) の
データを活用します。(→詳細はMSLTのページへ)
眠りに入ってから15分以内に出現するレム睡眠の回数(※)が、
ナルコレプシーの診断基準に用いられる回数より少ないことを
確認しなければなりません。
※sleep onset REM period(SOREMP)のことです。
最後に、客観的な眠気尺度のデータ(MSLTにおいて平均睡眠潜時の短縮)
もしくは、過眠傾向を示唆する所見として、1日の睡眠時間の合計が
長いことをポリグラフ検査またはアクチグラフィによって確かめます。
MSLTで計測するSOREMPの回数および上記の眠気尺度や過眠傾向を示す
具体的な数値については、後述します。
下記にある1から6の項目に合致する必要があります。
1.少なくとも3ヶ月以上続く眠気がある。
2.カタプレキシーがない。
3.SOREMPの回数が、MSLTの5回のセッションの中で2回未満である。
※前夜に行う終夜睡眠ポリグラフ検査にてSOREMPが出現した場合は、
MLSTにおいてSOREMPが記録されないことが条件となります。
4.下記のいずれかを満たす(両者の条件に合致しても良い)。
A.MSLTにおいて平均睡眠潜時が、8分以内である。
B.1日の睡眠時間の合計が660分以上(多くは12-14時間以上)であり、
ポリグラフまたはアクチグラフィによって確認されている。
5.睡眠不足が除外されている。
6.過眠の症状やMLSTの所見が、他の睡眠障害、精神疾患、薬剤による
影響によって説明することができない。
臨床の場において診断に役立つものとして、起床するのに時間がかかり、
目が覚めても、再び眠ってしまう症状や自動症の症状があります。
また、睡眠効率(90%以上)が高いことも参考所見となります。
特発性過眠症の原因は分かっていないので、眠気への対症療法が主体です。
ナルコレプシーの治療薬と同様の中枢神経刺激薬を用いることが多いです。
思春期に原因不明の眠気と長時間睡眠の傾向があれば専門医に相談しましょう。
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