
心臓病に多い中枢性睡眠時無呼吸と不眠症
中枢型睡眠時無呼吸の症状と病院で行う診断と治療
心不全、脳卒中に合併しやすいチェーンストークス呼吸の臨床的特徴とは
監修:阪野クリニック岐阜いびき睡眠障害の治療外来 阪野勝久
睡眠外来では、眠っているときの大きなイビキ、無呼吸、および日中の眠気が
特徴である閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)の治療相談を
受けることが多いです。OSAの原因は鼻から喉までの上気道の物理的閉塞です。
一方、このページで取り上げる無呼吸のタイプは、中枢性睡眠時無呼吸です。
英語では、central sleep apnea(CSA)と呼ばれています。OSAとの違いは、
脳にある呼吸中枢の機能異常によって、無呼吸発作が生じることです。
呼吸パターンにも特徴があり、無呼吸または低呼吸に続き、呼吸が漸増し後に
漸減し、再び無呼吸を繰り返すパターンとなっています。周期性があり、
1回の周期が45~90秒のサイクルとなることが多いです。
チェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration:CSB)と呼ばれており、
中枢型睡眠時無呼吸と合わせて、CSA-CSBとも記載されることもあります。
一般的には、慢性心不全、脳卒中に高頻度に併発することが知られています。
心不全患者の約6割にCSAを合併するという報告もあります。後者については、
発症してから数日間にチェーンストークス呼吸(CSB)が頻繁にみられます。
心不全患者の中では、男性、60歳以上、日中の高炭酸ガス血症、心房細動が、
CSBの危険因子として知られています。
腎不全との関係を指摘している研究報告もあります。
心不全にCSA-CSBが合併すると、生命予後が悪化します。心筋梗塞を発症した後、
心不全を発症することがあります。その際、チェーンストークス呼吸を伴った
中枢性睡眠時無呼吸を合併する場合は、積極的な治療介入が必要となります。
主な症状は、不眠の症状や日中の眠気です。夜間の呼吸困難や中途覚醒を
訴える方も多いです。ぐっすり眠れない、眠っているときに息苦しい症状で 困っている
心臓病をお持ちの方は、睡眠障害の専門医に治療相談をしましょう。
眠っているときに頻回に無呼吸が生じることで、低酸素血症となります。
その結果、呼吸が再開するときに、たびたび目が覚める症状が出現します。
本人の自覚として、「熟睡できない」という不眠症の症状が問題となります。
心筋梗塞、心房細動、心臓弁膜症、不整脈、拡張型心筋症、高血圧による
心不全のため治療を受けている方は、眠りについて思い当たることがあれば、
最寄りの専門病院に相談することをお勧めします。
自覚症状や臨床背景と終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnograpy:PSG)により、
診断が確定されます。
前者については、眠気、不眠症の症状(入眠困難、中途覚醒など)、いびき、
呼吸苦による覚醒や無呼吸の出現あるいは、うっ血性心不全、心房細動、
脳梗塞や脳出血などの神経疾患の存在が必須となります。
一方、後者の条件として、1時間に5回以上の中枢性無呼吸または低呼吸が確認され、
一晩で観察される無呼吸と低呼吸の半数以上が中枢性イベントであること、
そして、チェーンストークス呼吸の存在が必須です。
もちろん、他の睡眠障害や薬剤の影響が除外されていることが条件に必要です。
基礎疾患の治療が優先されますが、眠っているときの呼吸状態や低酸素血症を
改善する目的として、以下のような治療手段があります。
1)在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)
チェーンストークス呼吸を伴った睡眠時無呼吸(AHI:20以上)が確認され、
NYHA(New York Heart Association)の心機能分類Ⅲ度以上を満たす
慢性心不全と 診断されている場合に、健康保険の適応があります。
眠っているときに鼻から少量の酸素を吸入することで眠りの質、呼吸の状態が改善し、
酸素不足が解消されます。その結果、日中の眠気もなくなります。
2)陽圧呼吸療法
CPAP治療やASV治療(適応補助換気)を使用することで、夜間の異常呼吸を
改善することもあります。ただし、CPAP治療では中枢性無呼吸に対して、
充分な治療効果が得られない場合があります。
その場合は、後者のASV治療を試みます。CPAP治療と異なる点として、
ASV治療では患者の呼吸に合わせて空気が送られてきます。
HOTやCPAPよりも改善効果が高いという報告もあります。
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